第38回日本森田療法学会

会長挨拶

会長 黒木 俊秀

第38回日本森田療法学会

会長 黒木 俊秀

(九州大学大学院人間環境学研究院 教授)

この度、2021年11月20-21日に第38回日本森田療法学会を開催させていただくことになりました。本来は、2020年11月に開催する計画でしたが、あいにくの新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて1年間延期したものです。今回の大会は、諸般の事情を鑑み、WEB開催と致します。11月23日午後には、NPO法人生活の発見会との共催、及び公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団の後援により公開市民講座(心の健康セミナー)を同様にWEB開催致します。

わが国が世界に誇る独創的な精神療法である森田療法が創始されたのは、今から百年ほど前です。当時、九州帝国大学の下田光造教授が、その有効性を最初に認めた精神医学者であったことから、九州大学は伝統的に森田療法の臨床と研究に取り組んでまいりました。森田療法における百年の発展は、創始者の森田正馬のみならず、下田をはじめ数多くの先人たちのたゆまぬ研鑽と努力の賜物であり、そこにはもう一つの森田療法の物語があります。

そこで、今回の大会テーマは「森田療法の百年、もう一つの物語」としました。同タイトルのシンポジウムでは、森田療法百年の歴史に寄与した異能と奇才溢れる人たちの足跡にスポットを当てたいと思います。

森田療法が誕生した時代もA型インフルエンザウイルス感染症(スペイン風邪)のパンデミックが猛威を奮っており、当時の人々は、今日の私たちよりもはるかに感染症に対して強い恐怖を抱いていました。森田正馬も、長年、肺結核を患い、しばしば病床に伏すほど病弱でした。しかし、彼は「死の恐怖」は「生の欲望」へ転じると信じ、極めてエネルギッシュに生きた人でした。「ウィズ・コロナ時代に活きる森田療法」と題するもう一つのシンポジウムでは、不安と懐疑に満ちた現在を生きるための森田の智慧を様々な立場から探ってみたいと考えます。

特別講演には、名著『金閣を焼かなければならぬ』(河出書房新社)にて大佛次郎賞を受賞された内海 健先生(東京藝術大学教授)をお招きしました。同書で展開された三島由紀夫の精神病理について、わが国を代表する精神病理学の泰斗である内海先生の語りに聞き惚れたいと思います。

晩秋の博多の地へ皆さまにお集まりいただけないのは残念ですが、今回の大会がWEB開催の利点を活かして日本は優に及ばず全世界の森田療法に関心のある人たちと交流する機会となることを願っています。どうぞふるってご参加ください。